電力需給と日々向き合う都内の中小企業からも、懸念の声が漏れる。
「数十年後には原発がなくなるかもしれないが、今は電気の安定供給に重点を置いた方がいい」
こう話すのは機械部品を製造する「古田鋳造所」(東京都大田区)の古田友宏会長(71)だ。東電福島第1原発事故で実施された計画停電の苦い思い出が、頭を離れないという。4月の消費税増税を控え、取引先からは部品の単価引き下げを求められているといい、「経済効果が見込める五輪成功のための議論を深めてほしい」と話した。
ある都幹部も「行政として、低価格で安定した電力供給を求めていかなければならない。都内経済への影響もあり、『脱原発』の中身を見極めたい」と話す。
8歳と4歳の子供を育てる都内に住む主婦(30)は「食品の放射性物質が気になる」と脱原発に理解を示すが、「電気代が上がれば、今のままでは働こうにも待機児童が多くて働けない」と話し、脱原発はほかの施策と一緒に議論されるべきだと考えている。
地方自治に詳しい明治大学の牛山久仁彦教授(52)は「原発の争点化が悪いわけではないが、高齢化や災害対策など多様な都政課題について論争しなければ、都民生活は豊かにならない」と話している。