大量の有害物質が流れ込み、真っ黒に変色した河川。周囲には化学系廃棄物が投棄され、異臭を放っている(中国新聞社)【拡大】
このため汚染の改善が進まず、特に浅層地下水の汚染が悪化。それに伴い、採取深度もどんどん深くなり、1000メートルを超えるところも出てきた。このまま行けば、汚染が深層地下水にまで及び、中国の飲料水は深刻な打撃を受けるだろう。
改善の兆しが見えない水質汚染だが、高副院長によると、その原因は(1)断続的で一貫性のない取り締まり(2)取り締まる側と取り締まられる側の間に存在する利益関係(3)地方政府による妨害(4)一部企業による汚染物質の不法投棄-にあるという。
しかし、原因はそれだけではない。環境保護支出の伸び率が経済成長に追い付いていないことも汚染対策が進まない大きな要因だ。
中国政法大学の王燦発教授によると、現在の経済成長率であれば、国内総生産(GDP)に対する環境保護支出の割合は最低でも2%はあってしかるべきだ。しかし実際にはGDPの1.6%程度しかないという。
加えて、行政責任の所在が曖昧であることも汚染対策の進展を阻む障害となっている。中国では、複数の部門が地下水の管理や汚染対策に関わっているが、それぞれの権限も明確にされておらず、管理や取り締まりが徹底されない。
さまざまな問題が絡み合い、複雑化する地下水の水質汚染。高副院長は、企業による汚染物質の不法投棄をなくすことが最優先課題で、そのために「まずは地方政府の合理的な発展を促し、厳格に管理するとともに法制度を整備、それらを厳しく施行していくことが重要だ」と説く。「地方政府はその土地の生態系と共存できる企業を誘致し、その土地に合った節水型の農業、工業を発展させるべき」(高副院長)なのだ。