シュエテインドーの仏殿の前にたむろし、物乞いをする人々=ミャンマー・チャウセー郡(筆者撮影)【拡大】
□高橋昭雄東大教授の農村見聞録(14)
■経済効果享受の村民は半分
村の小さなパヤーの大発展に関する3回連載の最後にあたり仏殿に直接上がることはないが、それでもこのパヤーなしには生成も発展もなかった職種について言及することにしよう。
先述のガドーブェ(お供え物)は日中のみ仏像の前に置かれ、夕刻にすべてが廃棄される。バナナ1房とヤシ1個で3000チャット(約320円)のガドーブェが500チャットで処分され、これを売れば700チャットとなる。チャウセー郡内のみならず、周辺の郡からも業者がトラックでこれを買いに来る。すなわち、ガドーブェの処分権を持つ者は、これをパヤーの傍らで右から左に流すだけで、30%近くの粗利を手にできる。
17人の村人が、年間5万チャットの預託金を支払ってこの権利を得て、近隣の業者に卸している。ある祈祷(きとう)代理人の妻はこの仕事で月に50万チャット稼ぐという。
◆お供えに伴う商い
ガドーブェの主要な材料であるバナナをガドーブェ店に納入するプェザーと呼ばれる仲買人が10人ほどいる。彼らは皆が村外者で、バイクに青バナナを大量に積んで、契約した店に売りに来る。彼らの仕事は午前中で終わり、木陰で昼寝しているプェザーに聞いてみると、1日の利益は5000チャットほどであるという。
ガドーブェよりはかなり見劣りするが、仏様に奉げる首飾りのような花輪をひとつ200チャットほどで売る6人の少女たちがバイクの駐輪場にたむろしている。年齢は15歳から18歳で、皆、小学校中退である。農業労働者や左官などの土地なし層の娘たちで、早く稼がなければならなかったのが中退の理由だと、彼女たちは言う。