物流交通網の整備計画によりピサヌローク県ではここ数年、大型の商業モールなどが建設されてきた(セントラルプラザ提供)【拡大】
提訴先の憲法裁は判事の選出の仕組みから反タクシン派の「牙城」として知られる。インラック首相の罷免か失職を狙いたい野党にとって、インフラ計画も一つの“政争の具”に過ぎなかった。
タイでは今、産業界を中心に失望の声が広がっている。タイ工業連盟のパユンサック会長はインフラ整備事業により、現在はGDP比で15%に相当する物流コストが2ポイント程度引き下げられるものと期待していた。ところが、まさかの違憲判決。計画が頓挫したことで、同会長は「物流コスト低減に伴う各種プロジェクトも大きく遅れるだろう」とすっかり渋い顔だ。インフラ政策をつかさどる運輸・交通政策計画事務局の広報官も「通常予算の枠内拠出と民間投資を期待するしかないだろう」と計画の見直しを示唆している。
事業のストップは民間経済にも影響を与え始めている。ピサヌロークでの商業地では、「判決から1カ月で15~20%程度、地価が下がった」と現地の不動産業者。他の経済回廊網に該当するエリアでも地価が下落したり、土地を売りに出したりするケースが目立つようになったという。半年に及ぶタイの政治混乱は、憲法裁の違憲判決も相まって足元の経済にも確実に影を落とし始めている。(在バンコク・ジャーナリスト 小堀晋一)