ここ最近、ウォール街を擁するニューヨークでは、ブラジルからの要人訪問が相次ぎ、同国の商工会議所も積極的にウォール街関係者を招いたセミナーを開いている。
なぜなのか? 今月12日から主催するサッカーのワールドカップ(W杯)をてこに、米国からの新規投資や観光誘致を狙っているのだ。
金融危機後のブラジルは高インフレと消費停滞で成長率が鈍化した。経済が低迷している新興国の筆頭格と見なされていただけに、W杯はウォール街を見返す乾坤一擲(けんこんいってき)の勝負材料となっている。
エコノミストの予想幅は広いが、ブラジルにとって、W杯の経済寄与度は楽観的な数値で130億ドル。保守的に見積もっても30億ドルあるという。スタジアム建設や交通網整備は公共工事であり、観光客の増加は雇用を生む。日本と韓国が2002年に共催したW杯の経済効果は約120億ドル、06年のドイツ大会では約140億ドル、10年の南アフリカ大会では約55億ドルだったとされる。
W杯は4年ごとに開催する。米銀大手ゴールドマン・サックスによると、1974年から2010年の大会まで、開催国の平均株価変動率(決勝戦後の1カ月間)は2・7ポイントほどMSCI世界株価指数を上回った。
面白いことに、開催国だけで相場浮揚の「期待」が高まるわけはない。歴史的に、試合の勝敗と株価動向は正の相関関係にある。優勝国の株価は上昇する傾向にあるのだ。