敵対的な株の買い占めに対抗する買収防衛策を廃止する企業が増えている。5月末までに廃止を決めた企業を除くと、導入社数は平成19年末以来、約6年半ぶりに500社を下回った。経営者の保身につながりかねないとして、株主総会で防衛策に反対する動きが強まっていることが背景にある。一方で、アクティビスト(物言う株主)の動きが再び活発化する兆しも出ており、今月の株主総会では、防衛策への賛否とともに動向が注目されそうだ。
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野村証券によると、5月末までの発表ベースで、導入社数は498社と、ピークから約13%減った。6月の総会では旭化成や日本郵船が、有効期間を終える防衛策を更新しない方針だ。
防衛策は17年頃から導入が始まり、ピークの20年末には570社まで増えた。元通産官僚の村上世彰氏が率いた通称・村上ファンドによる阪神電気鉄道(現阪急阪神ホールディングス)株の大量取得や、米系投資ファンド、スティール・パートナーズによるサッポロホールディングスへの買収提案などが起こり、企業側の懸念が高まったからだ。
しかし、その後はリーマン・ショックによる損失などで投資ファンドの活動が弱まったほか、海外の機関投資家を中心に防衛策に反対する動きが広がったことを受け、減少に転じた。大和総研によると、5月までに開催された今年の主要企業の総会で防衛策の平均賛成率は73・5%と、3割近くの株主が反対だった。昨年の総会では、富士フイルムホールディングスが防衛策更新を直前に撤回。否決の可能性が高くなったためとみられる。
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一方、堅調な株式相場を背景に、物言う株主が再び活発化するという観測もある。今月の総会には、日本たばこ産業(JT)や東芝に対して増配などの還元強化が株主から提案された。村上ファンドの元幹部が代表を務める投資会社、ストラテジックキャピタルも、複数の会社に株主提案を出している。大和総研の深沢寛晴主任コンサルタントは「他の機関投資家が賛同しやすい提案を行い、一緒に戦う構図をつくろうとしている」と指摘する。
導入社数の先行きについては、「法改正で株式公開買い付けのルールが整備されたため、防衛策による『時間稼ぎ』の意義は小さくなった。増えていくことは考えにくい」(野村証券の西山賢吾シニアストラテジスト)との見方が強い。
市場から評価される経営を行って株価を上げるという“最高の防衛策”が、これまで以上に求められる。(高橋寛次)