記者会見する鶴岡公二TPP首席交渉官=12日、オタワ(共同)【拡大】
ただ、TPP交渉はこれまでに日本が合流した昨年を含め、3度にわたって妥結の目標時期が延期されてきた経緯がある。多国間の通商交渉は長期化するほど、参加国の妥結に向けた機運は低下するとされ、甘利明TPP担当相も「年内に大筋合意に持っていかないと、交渉が長期にわたる危険がある」と懸念を示していた。
日本政府内には慎重派から「交渉はすでに漂流状態。焦って譲歩カードを切る必要はない」(高官)と日米の関税協議などで“牛歩戦術”に転換する必要性を指摘する声もある。
とはいえ、TPPは安倍晋三政権の成長戦略の柱で、米オバマ政権にとっても輸出増と雇用拡大が期待できる重要政策だ。そもそもTPPには日米主導でアジア太平洋地域に先進国型の通商ルールを浸透させ、域内で存在感を高める中国を牽制(けんせい)する狙いもあった。交渉が暗礁に乗り上げれば、中国につけいる隙を与えかねないだけに、日米とも交渉の推進力をどう維持するかが課題になる。(オタワ 小雲規生、本田誠)