【飛び立つミャンマー】高橋昭雄東大教授の農村見聞録(18) (2/3ページ)

2014.7.18 05:00

 もう1つの組合の名称は「セーダナーシン・ルーフム・クーニーイェー・アティン(誠意による社会奉仕組合)」という。2012年にできた新しい組合である。慶事に使うテーブルや食器などを弔事に使うのは縁起が悪い、というのが組合設立の理由だが、他の村ではどちらにも同じ物を使用しているので、これは表向きの口実にすぎない。

 同組合は、正副の組合長こそ村の長老格で人望のある人たちであるが、実際に組合を組織し運営しているのはコー・タンゾーという、村の娘と結婚して村に来た30代の若者である。新組合を使い、村の有力者に成り上がるのが彼の本音だという。

 彼は、村のいろいろな集会でゴーバカアプェ(仏塔管理委員会)の長老たちを批判したり、反ムスリムの扇動をしたりと、評判は必ずしも良くないが、その行動力によって、霊柩車を保有する組織にまで勢力を拡大してしまった。

 この組合に不満を持つ人はもちろん加入しないが、かなりの村人たちは両方に入ってそれぞれの組合からの便益を享受しようとする。彼らは「組合員」というよりも「消費者」として参画し、組合が役に立たなければいつでも抜けてしまう。この新たな慶弔組合の存続性は、いまだ確定していない。

 ◆高い離脱の自由度

 そのほか村には、仏塔管理委員会、斎飯供与組、田植え女組合といった組織があるが、いずれも「やりたい人が入る」というスタンスである。いったん入っても、運営の仕方が気にいらなかったり、人間関係が悪化したりすれば、簡単に辞めてしまう。極端な場合は、同種の新しい組織ができることもあり、それがまた短期間になくなってしまうことも少なくない。

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