日銀と政府の景気判断に乖(かい)離(り)が広がっている。内閣府が月例経済報告などで景気判断を引き下げる一方で、日銀のみが強気の判断を貫いたままだ。市場に大量のお金を流す日銀の大規模金融緩和は、企業や消費者のマインドを高める試みとあって「弱気を見せられない」(市場関係者)という事情もある。しかし、エコノミストの多くが「景気後退局面に入った」と分析する中で、日銀の見解に対する“信頼性”が揺らぎ始めている。(藤原章裕、佐久間修志)
内閣府は10月の月例報告で、判断の表現を9月の「一部に弱さもみられる」から「弱さがみられる」に変更し、2カ月連続で下方修正した。住宅などの売れ行きが伸び悩み、生産が落ち込んだためだ。甘利明経済再生担当相は「消費と生産は若干弱含みになっている」と、景気が下振れしていることを認めた。
8月の景気動向指数が悪化した際も、景気判断を「足踏み」から「下方への局面変化」と4カ月ぶりに下方修正し、数カ月前から景気が後退局面入りした恐れがあると指摘した。
こうした指標を受けて、自民党内では消費税再増税への慎重論が広がっている。22日には再増税延期派の議員連盟「アベノミクスを成功させる会」が勉強会を開催した。講師に招かれた本田悦朗内閣官房参与は「日銀が掲げる『2%の物価上昇』の継続を確信できるまで、再増税は待った方がいい」と平成29年4月まで先送りするよう訴えた。