だが、政府・与党の動きとは裏腹に、日銀は10月の金融政策決定会合で「緩やかな回復を続けている」との景気判断を13カ月連続で据え置いた。黒田東(はる)彦(ひこ)総裁は会合後の記者会見で、「金融緩和は所期の効果を発揮しており、物価目標に向けての道筋を着実にたどっている」と強気の景気・物価判断を貫いた。
10月の地域経済報告(さくらリポート)でも、全9地域の判断に「回復」の文字を盛り込んだ。近畿など4地域で所得の判断を引き上げたことが強気の見通しにつながったようだ。
だが、増税や円安に伴う物価上昇に賃金の伸びは追いついていない。庶民の皮膚感覚としても回復を実感しにくいのが実情だ。
こうした“温度差”の背景を、法政大学経済学部の小黒一正准教授(公共経済学)は「内閣府は統計数値を基に機械的に景気判断をしており、手心を加えにくい。一方、黒田日銀は金融緩和の正当性を裏付ける方向に走りやすいためではないか」と分析する。
日銀は31日にまとめる「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、26年度の実質成長率見通しを従来の1・0%から0・6%程度へ引き下げる方向で検討するが、民間予想(平均0・3%程度)とは開きがある。同日公表の9月の消費者物価指数(除く生鮮食品)は、増税分を除いた伸び率が1%前後とみられ、2%の目標にはほど遠い。
みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「景気の実態は日銀の見立てよりも弱く、黒田総裁は説明に苦慮している。来年1月にも追加緩和を迫られる」と予想する。