■固定価格買い取り制度 欠陥を露呈
「『捕らぬ狸(たぬき)の皮算用』を叫ぶのは責任ある政党のすることではない。環境省の数字は何を根拠にしているのか。説明してほしい」
エネルギーミックス(電源構成比率)の議論が佳境を迎えた今月8日、自民党本部で開かれた環境・温暖化対策調査会に参加した参院議員が鋭く詰め寄った。
やり玉に挙がったのは太陽光や風力など再生可能エネルギーの導入拡大を進める環境省の試算だ。送電網の整備や蓄電池の活用などの対策を講じた場合、2030年度時点で発電電力量の最大35%を再生エネで供給できるとした。
議論を先導し、電源構成に占める再生エネの比率を上積みする狙いがあったが、必要なインフラ整備をどう進めるのかなど、実現に向けた道筋を描けていない「地に足の着かない数字」(自民党幹部)だった。
再生エネの過度な導入は電気料金の高騰を招く。このため、現実的な数字の積み上げを目指す経済産業省や、それに賛同する自民党議員らが一斉に反発した。試算は事実上お蔵入りとなり、発電コストが安く昼夜を問わず安定して発電できる原子力を一定程度確保する流れができた。
28日まとまった電源構成案では、再生エネの比率は22~24%で決着。原子力の比率は上回ったが、現実的な範囲で収まった。経産省幹部はこの日の有識者会議で「再生エネの最大限の導入拡大と国民負担の抑制を両立した」と胸を張った。
政府は再生エネの導入拡大に向け、優遇装置を講じている。だが、導入を拙速に進めれば、安定供給への不安といった負の側面に直面することになる。