【ワシントン=小雲規生】通商交渉の権限を大統領に一任する米国の貿易促進権限(TPA)法案の成立の見通しが高まった背景には、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を政治的な“遺産”にすることを狙うオバマ大統領の議会工作がある。ただ、昨年11月の中間選挙で、自由貿易に慎重な与党民主党が敗れたことで政治環境が整った面もあり、オバマ氏は幸運に助けられたともいえそうだ。
「議会工作の先頭に立っている」。米議会関係者はTPA法案成立に向けたオバマ氏の熱意をこう評価する。アジア太平洋地域との連携強化を米国経済の活性化につなげようとするオバマ氏にとって、同法案はTPP実現のために欠かせない一手だ。5月の上院の審議では投票中の民主党議員に電話をかけて説得工作を展開し、6月の下院審議でも採決直前に議会に乗り込むという異例の戦術で民主党議員に賛成を促した。
議会対策にはルー財務長官、ケリー国務長官、ビルサック農務長官ら関係閣僚もこぞって参加。通商問題とは縁遠くみえるカーター国防長官も「TPPは空母一隻と同じぐらい重要」とアピールするほどで、米メディアは「1期目の医療保険制度改革(オバマケア)以来の力の入りようだ」としてきた。