最初は昆布だけ。それから鶏肉などを加えてバリエーションを出していくが、イタリア市場でふつうに入手できる材料だけを使う。例えば醤油はスーパーの棚にあるキッコーマンである。
日本においても日々使える食材にはそれぞれの変化があり、お客さんの好みや体調を考慮しないといけない。「俺の味はこれ!」と一つの味に固定するのはそもそも現実にありえない、との認識が前提にある。しかも海外に出れば条件はさらに多様性に富むわけだ。
徳岡氏のワークショップをローカリゼーションのポイントからみると、鰹節を使えないという法律上の制約に従うのが出発点にある。「ヨーロッパの人に鰹節の味は分かるまい」ではないのだ。
これまで「日本の本物の味をヨーロッパの人に伝えたい」という試みは数多くなされてきた。日本とまったく同じ味を再現するために、日本から高価な食材を輸入してきた。いや、日本で高価でなくても飛行機で運んでくればコストは高くなる。
当たり前だが、そんなバカ高い「本物」にお客さんはなかなかついてこない。それだけでなく、日本の同じ魚を同じ鮮度で入手するのは物理的に不可能だ。こういう事情に老舗の高級日本料理の人たちも気づきはじめ、伝統であるとか「本物」とは何なのかを真剣に考えている。
実に象徴的な転換であり、ローカリゼーションが引き起こすイノベーションの契機である。