人民銀行の幹部の一人は、「人民元の国際化による中国の利益は大きく分けて2点ある」と話す。
輸出拡大と対外進出を急ぐ中国企業にとって、貿易面などで人民元がそのまま使えることは為替変動リスクの低減につながる。さらに、ドルのように人民元を使う国が増えれば増えるほど、貿易や金融のルール策定など国際社会で中国の発言力が高まることだ。
習近平政権は、中国を起点に中央アジアや東南アジアを経由して内陸と沿岸から欧州に向かう経済圏を構築する新シルクロード(一帯一路)構想を打ち出している。その資金源ともなる国際金融機関アジアインフラ投資銀行(AIIB)について、市場関係者は、将来的に人民元建て融資が行われる可能性があると指摘する。
海外に資本流出も
ただ人民元国際化の推進力である中国の経済成長は、減速の色が濃い。国家統計局が15日発表した15年4~6月期の国内総生産(GDP)は、物価上昇分を除いた実質で前年同期比7.0%増。1~3月期から横ばいで、リーマン・ショック直後以来の低い水準で推移している。