原油相場の下落が続いている。21日のニューヨーク市場で原油先物相場は国際指標の米国産標準油種(WTI)が約6年半ぶりに節目の1バレル=40ドルを一時割り込んだ。原油が安くなればエネルギー関連費が圧縮され、日本企業の業績を押し上げる要因になる一方、中国景気の悪化など世界経済の失速につながり、日本企業の輸出には「逆風」になる恐れも併せ持つ。脱デフレを掲げる日銀にとっても物価安を招く「悪材料」だけに、原油安のマイナス面も無視できない状況になりつつある。
商社、膨らむ損失
資源を輸入に頼る日本の企業にとって原油安は仕入れコストを圧縮できる「追い風」となる。大和証券の試算によると、昨年比2割安の原油価格が続けば主要200社の経常利益を9.7%押し上げるという。
「産油国に長年支払われてきた巨額のお金が、ようやく日本国内にとどまるようになった。幅広い業種に恩恵が出ている」と同証券の山崎徳司氏は話す。
例えば、海運大手は船舶重油の想定価格を1トン当たり350ドルとしているが、実勢価格は270~280ドルと大きく下がっているため、利益を上積みできる。SMBC日興証券の宮前耕也氏は「原油価格の10%の値下がりは国内総生産(GDP)を0.1ポイント押し上げる」と指摘する。