一方、原油安で損を被るのは石油元売り会社だ。原油価格が下がれば保有する原油在庫の価値が下がり、評価損の計上を迫られる。総合商社も原油安で権益の減損処理が重なれば損失が大きく膨らむ。先進国の省エネが、原油安による世界景気の押し上げ効果を小さくしている面もある。JPモルガン証券の足立正道氏は「日本では原発事故後に省エネが徹底し、原油安でエネルギー関連支出が縮小する所得改善効果が小さくなっている」と打ち明ける。
ここにきて、原油安の要因として多くの専門家が指摘するのが「中国の景気失速懸念」(三菱総合研究所の武田洋子氏)だ。「中国バブル崩壊」が意識されれば、日本企業の対中輸出や現地生産にも悪影響が出る。金融情報大手トムソン・ロイターの8月調査では、国内製造業の19%が「対中投資を従来計画より減らす」と回答している。