【動き出す新経済圏 TPP妥結】(上)「聖域」めぐり解釈にズレ (2/3ページ)

2015.10.7 05:00

 交渉の大きな節目とされた14年4月の日米首脳会談。その前夜、安倍首相は東京都内のすし店でオバマ大統領から「私の支持率は45%だが、安倍内閣は60%。大胆に決断できるんじゃないか」と妥協を求められた。だが、国会で重要5分野の保護を決議した日本にとって、その要請は受け入れられなかった。

 日本側にも失策があった。交渉参加に先立った米国との事前合意で、日本車に対する米国の関税撤廃を最大限先送りすることを認めてしまったことだ。13年4月の合意文書には、「(TPP交渉で決まる)最も長い段階的な引き下げ期間によって撤廃」と明記された。米自動車関税の早期撤廃は、日本におけるTPPの最大の“果実”となり得たはずだが、交渉前に断念した形となってしまった。

 この判断は、日本の参加を米議会が認めやすくするため、政治力の強い米自動車業界の意向に配慮したためだ。政府内では「『農産品でここまで譲歩したのに、工業品ではこれだけしか得られないのか』と国民に受け止められかねない。交渉がやりにくくなった」(農林水産省幹部)と恨み節もあがった。

 自動車部品の関税をめぐる両国の交渉は混迷を極めた。「お前は交渉相手として失格だ」。14年9月、米ワシントンで開かれた日米閣僚協議で、甘利明TPP担当相は米通商代表部(USTR)のフロマン代表にこう声を荒らげ、席を立った。日本は米国に対し自動車部品関税早期撤廃を求め、米国も容認する姿勢を見せていた。だが、この協議でフロマン氏は突如、難色を示し始めた。自動車部品を日本に農産品関税で譲歩を促す“交渉カード”とする戦術に、甘利氏は怒りをぶつけた。日米の亀裂は最も深刻な状況に陥った。

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