【動き出す新経済圏 TPP妥結】(下)国内農業「抜本改革の好機」 (2/3ページ)

2015.10.9 05:00

「品質と安全性を求める芽室の牛を国外の消費者に届けたい」と大野ファームの大野泰裕社長は意気込む=北海道芽室町(西村利也撮影)

「品質と安全性を求める芽室の牛を国外の消費者に届けたい」と大野ファームの大野泰裕社長は意気込む=北海道芽室町(西村利也撮影)【拡大】

 ◆牛肉関税9%に

 TPP時代の荒波は畜産農家にも押し寄せる。牛肉は現在38.5%の関税を16年目以降に9%まで下げる。

 畜産酪農王国の北海道芽室町。麦畑の一角のカフェは、大勢の客でごった返していた。ガラス張りの外観にテラス席も設けたおしゃれなたたずまいは、都会にあっても遜色ない。

 このカフェ「カウカウビレッジ」は農業生産法人「大野ファーム」が昨年6月末、敷地内にオープンした。自社で育てた牛の肉を使った料理を提供する「産地直結」が売りだ。昨年4月のプレオープンから今年3月までに約9000人が来店。タイや豪州など海外からも来店する観光スポットとしても認知され、今年度は1万2000人以上の来店を期待する。

 「どのようなお客さんをターゲットにモノづくりをするか見定められないと、今後は生き残れない」。同社の大野泰裕社長はカフェを消費者のニーズを的確に捉えるための情報収集拠点と位置づける。

 そこには、TPPなどの貿易自由化により、安価な牛肉が大量に輸入されることへの危機感がある。

 TPPにより「和牛の輸出機会が広がる」との声もあるが、大野社長は慎重だ。「輸出はコストがかかり、すぐにブランドが認知されるわけでない」と指摘。「それならば海外から芽室町に人を呼び込み、商品と地域そのものの良さを知ってもらい、リピーターを増やす方がメリットが大きい」と強調する。

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