韓国の朴槿恵大統領(右)との会談に臨む安倍首相=2日、ソウルの青瓦台(代表撮影・共同【拡大】
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加をめぐり、韓国が日本に協力を求めたことは、韓国政府が実施している日本産水産物の輸入規制問題を解決する糸口となりそうだ。TPP参加には全12カ国の承認が必要となる。日本側は輸入規制撤廃などの条件を韓国に求める構えだ。
「(さまざまな懸案に対し)申し上げることは申し上げながら、韓国側の対応を求めた」
安倍晋三首相は、韓国の朴槿恵大統領との会談後、記者団に日本産水産物の輸入規制問題などに早期の対応を求めたことを明かした。
韓国は東京電力福島第1原発事故を理由に、平成25年9月から福島県など8県の水産物の輸入を全面禁止。日本は放射性物質が基準値を下回っているとし、規制撤廃を求めたが折り合わず、日本は今夏、世界貿易機関(WTO)に提訴している。
だが、韓国がTPP参加を検討する姿勢を示したことで、輸入規制問題にも風向きが変わる可能性が出てきた。韓国がTPPに正式参加する場合、既に参加した12カ国から、厳しい市場開放などを求められるためだ。
TPP参加を承認する日本側は交渉で優位な立場となる。輸出競争力で日本に後れを取るとの焦りから、韓国側が要求を受け入れる可能性は高く、「輸入規制の緩和など、韓国からの妥協を引き出しやすくなる」(交渉筋)と期待する声が上がる。
ただ、韓国側には、対日貿易赤字をこれ以上拡大させたくないとの思惑もうかがえる。中国の「新シルクロード構想(一帯一路)」にも協力的な姿勢を示しており、TPPへの参加よりも中国との関係強化を優先する懸念もある。(西村利也)