TPPで焼き肉が今より身近になると期待されている【拡大】
◆広がる選択肢
日本が輸入している農林水産品は2328品目。最終的には8割超の1885品目で関税が撤廃される。安価な輸入品の流入で家計への恩恵が拡大しそうだ。
東京都江東区のサンケイスーパーの精肉コーナー。国産の牛肉パックを手にしていた主婦、中村智津子さん(49)は「食べ盛りの息子がいる。安全でおいしければ、外国産も取り入れて食費を減らしたい。外国産との競合で国産も値下がりしてくれれば」と期待する。
日本の消費者の「国産信仰」は今も根強い。日本政策金融公庫が8月に公表した意識調査(20~70代の2000人対象)で、食の志向を尋ねたところ、国産を「安全」と感じる人が72%に上る一方で、輸入品はわずか1.9%。「おいしさ」も国産の65%に対し、輸入品は3%にとどまった。64%が「割高でも国産を選ぶ」と答えている。
食の安全性をめぐっては、遺伝子組み換え食品の表示義務のない米国の基準が日本にも適用されるのではないか、といった懸念もあったが、政府は日本の厳格な安全基準を維持する方針を表明している。
消費生活アドバイザーの久保京子さん(52)は「輸入食品に対する国の基準やチェック体制の理解が進めば、安全面の過度な不安は消える。自由化により消費者の選択肢は広がっていく」と予想する。