TPPで焼き肉が今より身近になると期待されている【拡大】
◆ブランドの自負
「海外から安いワインがいくら入ってきても、うちには関係ないと思うよ」
大阪府柏原市の老舗醸造所「カタシモワイナリー」を経営する高井利洋さん(64)は自信を見せる。
「たこシャン」と呼ばれるスパークリングワイン。大阪のソウルフード、たこ焼きに合わせて気軽にワインを楽しんでほしいと願って命名された。地元の畑で栽培したブドウを使い、価格は750ミリリットル瓶で2200円(税別)。コンビニエンスストアには1瓶400円前後の輸入ワインが並んでいる。割高感は否めない。だが、売れているのだ。
TPPの発効8年目でワインの輸入関税が撤廃されるが、高井さんが恐れる様子はない。ブランドとして自負があるからだ。ブドウは地元の5つの醸造所と協力して育てている。近郊から1000人を超えるボランティアが集まり、収穫までを行う。8割が女性だ。
「大阪のワイン、置いてないの?」。彼女たちは行く先々でこう尋ね、自分たちで造ったワインを広めた。今や高級ホテルや百貨店の担当者がこのワインを求め、こぞって柏原詣でをするまでに。売上本数は6年間で35倍に増えた。
高井さんは言う。「日本のここでしか味わえないものがある。TPPは地域が持つ力を見直す機会になるのではないか」
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この連載は平沢裕子、戸谷真美、磨井慎吾、油原聡子、三品貴志、玉崎栄次、本間英士、中井なつみが担当しました。