【飛び立つミャンマー】高橋昭雄東大教授の農村見聞録(32) (3/3ページ)

2015.11.27 05:00

 ◆法の支配を重視

 以上がNLDの掲げる経済政策の6本の柱である。奇異に思われるのが、経済発展には必須の「工業化」という言葉が、この経済の節にも他の所にも全く出てこないことである。工業化は、第3の柱の外資導入に頼りきるということであろうか。農業が発展すれば製造業やサービス業も発展するとの記述もあるが、それではあまりにも安易すぎるのではないだろうか。

 また、これらの項目を見るかぎり、現政権与党である連邦団結発展党(USDP)の経済政策から大きく変わるものでもない。テイン・セイン大統領は、NLDの「今こそ変革の時」というスローガンを、「自分は十分に改革を実行してきた。これ以上進めると共産主義になる。」と批判したが、彼が行ってきた政策と変わらないのだから、皮肉なことにそのような懸念は全くない。

 では、経済政策における「変革」はどこにも見当たらないのだろうか。政策の細部を熟読してみると、法による統治、政策の透明性、行政の説明責任といった言葉があちらこちらに散りばめられているのに気づく。そして、これこそが経済政策の最重要課題であり、現政権との差異を際立たせるものである。

 これらが順守されなかったため、税吏が収賄して脱税を見逃したり、資源開発が水質汚濁をもたらしたり、農民が耕作地をむやみに接収されたり、といった問題が歴代軍事政権やその流れをくむ現政権下では頻発してきた。このような事態を改善してこそ経済発展がもたらされるというのがNLDの主張である。

 スーチー氏が親日的であるか否かはさておき、財政の効率化、政策の透明化、賄賂やコネの撲滅、といった基本方針は、同様のコンプライアンス(法令順守)を重視する日本の援助機関や企業にとっても決して悪い話ではない。人がいないと言われるNLDから選ばれた大臣たちが、これを実行する能力があるかどうかは、まだ不明であるが。(随時掲載)

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