議長を務めたカリフォルニア工科大のデービッド・ボルティモア教授は、ゲノム編集について「難しい問題だが、どのように扱っていくか、よい方向性が出せた」とコメント。会議に参加した北海道大の石井哲也教授は「毛の色や身長といった見た目を『改造』する手段としては受け入れられない」と訴えた。
会議が開かれたきっかけは、中国の研究チームが昨年4月に発表した論文だ。血液の病気の原因となる遺伝子を取り除くため、ゲノム編集によってヒト胚(はい)のDNAを改変したとの報告で、結果的には臨床に応用するにはまだ精度が低いとの内容だった。倫理面の問題を回避するため、もともと遺伝子の異常で子供として生まれてくることがない受精卵を使ったとされるが、世界中の科学者に大きな衝撃をもって受け止められた。
これを受け、米ホワイトハウスは5月、ゲノム編集でヒト胚のDNAを改変することは「将来世代への影響が不明で、現時点では越えてはいけない一線だ」との声明を発表した。身体の一部の細胞でDNAを改変する場合と異なり、精子や卵子、受精卵のDNAを書き換えると生まれてくる子供の全身の細胞に影響し、未来の世代にまで残ることになるからだ。