従来の遺伝子組み換え技術でも、特定の遺伝子を破壊したり別の遺伝子を挿入したりすることはできたが、偶然に左右される部分が大きく、非常に効率が悪かった。ゲノム編集は、狙った部分のDNAを正確に短時間で改変できることから、ここ数年で世界中の研究現場へ爆発的に広がっている。
ただ、ゲノム編集はDNAを精密に切り取ることができるが、書き換える効率はまだ低いといい、技術上の課題がある。また、これらの手法の多くは海外で開発されたため、日本では十分に研究されていないという。生命科学の研究だけでなく新薬開発や食品産業などでも活用が期待される技術だけに、国内のレベル向上が求められる。
ゲノム編集「食品」がいずれ食卓に…?
ゲノム編集は、さまざまな分野で極めて有用な技術だ。
京都大iPS細胞研究所の堀田秋津助教のチームは、筋肉が衰弱していく難病、筋ジストロフィーの患者の皮膚から人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製したうえで、ゲノム編集で遺伝子の変異を修復することに成功している。将来的には、これを筋肉の細胞に分化させて患者に移植することで症状を改善できる可能性があるという。