松本浩史・産経新聞論説委員【拡大】
□産経新聞論説委員・松本浩史
「一強多弱」の政治状況を追い風に順風満帆な政権運営をしていた安倍晋三首相に、最側近として存在感を示していた甘利明前経済再生担当相の違法献金疑惑がにわかに襲いかかった。野党も攻め口ができたと勇み立ったが、あにはからんや。報道各社の内閣支持率は高位安定でびくともしない。霧消したかに見えた衆参両院の同日選のシナリオは依然、くすぶり続けている。
千葉県の建設会社から計1200万円に上る現金が甘利氏側に流れていたという、週刊文春の疑惑報道が政界を駆け巡った先月20日。野党幹部は「国会運営の主導権を与党から奪い返せる。参院選に向けて弾みがつく」と意気込んだ。
なにせ、事と次第によっては、あっせん利得処罰法や政治資金規正法(虚偽記載)に抵触する可能性もある。羊羹(ようかん)の入った紙袋に現金を入れて、甘利氏に直接手渡したという同社総務担当の証言は生々しかった。
これを受け、甘利氏は記者会見で、政治資金として適切に処理したと説明。元秘書への現金授受については、一部は元秘書が流用したと認めるなどした。
■
首相は再登板後、小渕優子元経済産業相ら主要閣僚が「政治とカネ」の問題で辞任するという憂き目を見たが、衆院解散に打って出て中央突破を図るなど、野党のふがいなさも相まって事なきを得てきた。
それだけに、「アベノミクス」の司令塔を務めた甘利氏の疑惑に、野党が色めき立ったのは無理もない。ところが、肝心の内閣支持率は下がる気配がいささかもない。先の幹部は「国会で本格追及する前に甘利氏が辞任してしまった」と肩透かしを食らったことにほぞをかむ。
無論、元秘書の口利き疑惑などは、甘利氏が述べたように、第三者の調査結果を待たなければ詳細は不明のままで、説明責任が果たされたとは到底言えない。