松本浩史・産経新聞論説委員【拡大】
それでも、疑惑の発覚で参院選への影響を危惧する声が出始めた自民党内の空気は、あれよという間に一転し、「むしろ首相は自信を深めた」と、またぞろ同日選実施の観測が流れはじめている。
同日選は戦後、1980年と86年の2回行われている。最初は大平正芳政権下のことで、「ハプニング解散」と後世、評されるように、多くの政界関係者にとって不意打ちみたいなものだった。まさか通るまいとタカをくくっていた内閣不信任決議案が、自民党の反主流派から欠席者が出て可決となったからだ。
したがって、よしんば首相が同日選をもくろんでいるのなら、練りに練って主体的に解散に打って出た中曽根康弘政権に倣うのが賢い。
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それでなくとも首相が置かれている政治環境は、中曽根氏とかなり似ている。
まず指摘すべきは、「一票の格差」是正策に焦点が当たっていたことだ。83年衆院選をめぐる訴訟で最高裁は「違憲」と判断した。このため中曽根氏は「8増7減」の是正策を講じ、国会の正常化を解散の大義に掲げた。
前回衆院選をめぐり、最高裁は先に「違憲状態」と断じている。首相にしても、何らの措置もせずに解散カードは切れないだろう。衆院では議長の下に選挙制度調査会が設置され、都道府県の定数配分に「アダムズ方式」を導入するなどの改革案が提出され、与野党協議は近く本格化する。