安倍晋三首相との会談後、報道陣の質問に答える日銀の黒田東彦総裁=12日午後、首相官邸(斎藤良雄撮影)【拡大】
政府・日銀が、円の急騰を阻止するため、市場介入に踏み切ったとする観測が国内外の金融市場で急速に広がり始めている。11日の欧米外国為替市場で円相場の不自然な値下がりが進んだためで、日銀が大量の円を売って、ドルを買い円安に誘導したとする見方が広がった。市場では「政府・日銀がどこまで円高を容認するか」を注視しており、神経質な値動きが続きそうだ。
麻生太郎財務相は12日の閣議後記者会見で、足元の円の急騰に関し「必要に応じて適切に対応していく」と述べた。日銀の黒田東彦総裁も同日の衆院財務金融委員会で、物価への影響を注視した上で、必要な対応をとる考えを示し、為替介入の可能性もにおわせた。
既に欧米の外国為替市場では日本政府・日銀が介入に踏み切ったとする見方も浮上する。きっかけは11日の欧米外国為替市場。円相場が一時1ドル=110円台に急伸した後、一転して2円程度値を下げたためだ。 介入の有無について、麻生氏と菅義偉官房長官は12日の会見で「コメントは控える」と述べるにとどめ、否定も肯定もしなかった。
日本の介入で直接的に相場を円安ドル高方向に動かしたとなれば、ドル高で企業収益が悪化している米国の心証を害しかねない。日本政府として表だって動きにくい事情を抱えることから、市場では、介入事実を表明しない「覆面介入」もささやかれるなど、疑心暗鬼が広がり始めている。