◆イランに一番乗り
中国の動きはしかし、原油価格と備蓄増強だけをにらんだものではない。欧米による制裁の解除で、世界有数の原油埋蔵量を誇るイランの国際ビジネス社会復帰をにらみ、習氏が輸入国一番乗りを果たした政治的意味は小さくない。
習指導部の外交政策ブレーンの一人は「最大の深慮遠謀は原油輸入と引き換えになる対価をいかに支払うか、イランやサウジなど中東の産油国と交渉を進めたこと」と明かした。
習氏は原油や天然ガスの輸入対価として(1)高速鉄道や発電所などイランで遅れるインフラ建設を中国が担う(2)パイプラインを含む鉄鋼製品などを供与する-とイラン側に説明したという。中国は巨額案件でも「物々交換」の概念を持ち込むことをためらわない。鉄鋼などの素材、鉄道車両や自動車関連などの製品で、過剰な生産設備と在庫が経済成長の足を引っ張る中国。“在庫処分”で原油が購入できる「一石二鳥」の戦略だ。原油代金として中国製武器を供与するケースすら取り沙汰される。
さらなる戦略として、国際金融筋は、「米ドル決済が世界標準のオイルビジネスで、習氏は今後、人民元建て決済を導入するよう中東歴訪で説いて回った」と明かす。中国は元の国際化に躍起になっており、ドル基軸通貨の柱である石油取引にクサビを打ち込むタイミングと捉えたようだ。
元が原油の決済通貨として力をつければ、中東やアフリカの産油国の外貨準備高に元を組み込ませ、一般の貿易決済や投融資などでも元建てが広がる。そこに中国主導の国際金融機関アジアインフラ投資銀行(AIIB)などの建設プロジェクトを関連づける。中国が陸路と海路で欧州までインフラ整備で経済圏をつなげる「新シルクロード(一帯一路)」構想の重要経路に中東やアフリカはある。