【飛び立つミャンマー】高橋昭雄東大教授の農村見聞録(36) (3/3ページ)

2016.4.15 05:00

モンユワの「牛団地」で春雨工場から出た「廃液」を乳牛に与える酪農家の夫人=2016年3月(筆者撮影)

モンユワの「牛団地」で春雨工場から出た「廃液」を乳牛に与える酪農家の夫人=2016年3月(筆者撮影)【拡大】

 ◆見事なサイクル

 牛の排泄(はいせつ)物も悪臭を発するため、郊外で肥育せざるをえない。そこで春雨工場と隣同士になることによって、安価で栄養価の高い飼料を手に入れることができるようになった。乾燥地帯にあるため、水田から取れる藁(わら)やあぜ道の雑草が不足しているこの地域で、牛を多頭飼育することは非常に難しいことであった。それが春雨工場の排出物によって可能になり、これによって飼育される牛の排泄物は畑に入れられて、マメが育てられ、それが春雨の原料となる、という見事な循環が生まれた。

 ところがここに問題が生じてきている。牛団地から産出されるすべての生乳を買い取れる工場は一つしかない。つまり生乳市場は買い手独占状態であり、買い手が一方的に価格をつけることができる。現在の生乳買い取り価格は1ビス(1.6キログラム)当たり600チャット(1キロ当たり約33円)であるが、酪農家の話によると、800チャットでないと赤字になるという。乳牛頭数の増加に伴い、元々はただ同然であった春雨工場の「排出物」価格が急騰しているのがその要因である。

 最近は飼養頭数を減らしたり、酪農をやめてしまったりする農家も出始めている。日本よりもはるかに自由な生乳市場の調整弁の役割は、春雨工場でも牛乳工場でも畑作農家でもなく、勃興して間もない酪農家が一手に担っているようにみえる。(随時掲載)

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