◆生活水準の上昇志向
つまり、経済史上ずっと、人々が持つ生活水準の上昇志向が原動力となって消費は拡大し、GDPの成長率を押し上げてきたのである。その背景は、可処分所得が持続的に増えると消費拡大につながるのであり、過去の基本給・ベアの引き上げと名目GDPとの相関について日本総研が最近公表した調査研究からも読み取れる。人々は魅力的な新製品が出ると日常の出費を抑えてでも購入しているし、中間層・貧困層を中心に日々の食料品などで生活の質的向上には意欲的である。可処分所得が増えない中では消費の全体が伸びないだけで、生活水準の上昇志向は衰えることはない。そうした上昇意識が持続的な消費意欲を維持し、全人口の消費喚起が生む追加税収で高齢者への還付財源をまかなってなお余りある。
これから先、経済成長を阻むのは人口減少だが、20世紀を代表する大経済学者のケインズは80年も前に、そんな中でも生活水準の上昇志向が経済成長を下支えし得るし、いかに人々の上昇意識のバックアップが重要かを見て取っていた。そのバックアップとは、つまり可処分所得を持続的に増加させることであり、当政策案では特に若者世代に手厚く代替貯蓄できることが人口減少を食い止めるのに有効であろう。
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【プロフィル】大和田滝惠
おおわだ・たきよし 上智大学国際関係論博士課程修了。外務省ASEAN委託研究員、通産省NEDOグリーンヘルメット調査報告委員会座長などを歴任。著書多数。経済論文に「ヴィジブルな社会への経済政策」など多数。専門は社会哲学。65歳。東京都出身。