中国外務次官「G20主題は経済、邪魔させぬ」 会見で「南シナ海」議論を牽制 周辺住民は規制に不満、「期間中は旅行に行け」情報も

15日、北京の中国外務省で、G20首脳会議について記者会見する李保東外務次官(西見由章撮影)
15日、北京の中国外務省で、G20首脳会議について記者会見する李保東外務次官(西見由章撮影)【拡大】

 【北京=西見由章】中国浙江省杭州で9月4、5日に開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議について、中国外務省の李保東次官らが15日、記者会見した。李氏は会議の議題について「主題は経済成長であり、妨害はさせない」として、南シナ海問題を議題にしようとする動きを議長国として強く牽制した。

 李氏は世界経済について「依然として比較的大きな下振れ圧力に直面し、国際貿易は低迷し、保護主義が台頭するなど、不安定で不確定な要素が増加している」と指摘。こうした中で、参加国は会議や中国に大きな期待を抱いているとして、「世界経済の行方を指し示すといったG20の指導力の発揮と、国際的な経済協力の強化、協力のための新たなメカニズムの創設」などを目標に掲げた。

 海外メディアが「南シナ海問題について、中国の立場を説明するよい機会ではないのか」と質問すると、李氏は「国際会議では、一部の国が自ら関心のある問題を持ち出そうとするが、参加国の総意は経済問題に集中することだ」とくぎを刺した。

 中国政府がG20首脳会議の開催に向けて準備を進める中で、会場周辺の一部住民らからは強い規制に対する不満も漏れ伝わる。

 中国メディアによると、7月上旬には杭州に近い浙江省台州の公務員が、インターネット上で「政府は杭州の会場付近の各戸に1万元(約15万円)を支給し、会議期間中は旅行に行かせる。周辺の職場や学校は休みとなる」などと書き込み、「友人をもてなすときに家人を追い出す必要はない」と当局を批判した。この公務員は同月下旬、「騒ぎを起こそうとした容疑」で拘束され、懲戒免職の処分を受けた。

 こうした住民の不満に関する報道を意識したのか、15日の記者会見に出席した杭州市トップの趙一徳・党委書記は、第三者機関の調査結果として「95%以上の杭州市民がG20首脳会議の開催について誇りや満足を感じており、86%の市民が『幸福感』が大きく増したと感じている」と強調した。