日銀の黒田東彦総裁は5日、東京都内で講演し、今後の金融政策運営について「追加措置のコストはあるし、それによって不利益を受ける主体も出てくる」と認めながらも「日本経済全体にとって必要なのであれば、躊躇するべきではない」と述べた。2%の物価上昇率目標の早期実現のため、必要と判断した場合は追加緩和を辞さない構えを改めて示した。
日銀は今年2月、金融機関が日銀の当座預金に預けるお金の一部に事実上の手数料を課すマイナス金利政策を導入。銀行が本業の貸し出しで稼ぎにくくなったほか、保険会社が運用難に陥るなど、金融機関は反発している。
こうした中、黒田総裁はマイナス金利政策について「国債買い入れとの組み合わせによって、国債金利の一段の低下に大きな効果をもたらした。この枠組みはきわめて強力だ」と評価。その上で、「量・質・金利の各次元での拡大はまだ十分可能だ。それ以外のアイデアも議論の俎上から外すべきではない」と述べ、あらゆる緩和手段を検討していく考えを示した。
日銀は今月20、21日の金融政策決定会合で、大規模緩和導入以降の経済・物価動向や政策効果について「総括的な検証」を行う。黒田総裁は2%の物価目標の実現に向け、「最大限の努力を続ける」と述べており、検証での議論の行方に注目が集まる。