黒田東彦日銀総裁は8%への引き上げの際、安倍首相に予定通りの実施を強く進言した。背景には、異次元金融緩和さえすれば増税しても構わないという、金融緩和と緊縮財政の組み合わせに固執する財務官僚のシナリオがある。
財務省OBの黒田総裁はそれに従った。結局、増税はアベノミクスの効力を失わせ、異次元緩和そのものを無力化してしまった。黒田日銀の総括的検証は財政をカバーできず、増税が引き起こすデフレ圧力を素通りした。
安倍首相周辺は円高に焦り始めている。浜田宏一内閣官房参与(エール大名誉教授)は日銀による外債購入を首相に進言したし、首相も口にしたが、黒田総裁は応じない。外債購入は財務省の専管事項だという意識が邪魔するのだろう。
ならば、なおさらのこと、黒田総裁は躊躇(ちゅうちょ)することなく、マイナス金利の拡大または深掘りに踏み切るべきだ。物価はもはや黒田日銀の手には負えないが、少なくても金利だけは思い切って下げられる。何もしないと、米大統領選に引きずられて、円高にはずみがついてしまう。(編集委員・田村秀男)