【飛び立つミャンマー】高橋昭雄東大教授の農村見聞録(39) (2/3ページ)

2016.12.23 05:00

キリスト経典を学ぶカシ村寄宿学校で昼食中の学生たち=2016年、シャン州ラーショー郡(筆者撮影)
キリスト経典を学ぶカシ村寄宿学校で昼食中の学生たち=2016年、シャン州ラーショー郡(筆者撮影)【拡大】

 そこで助力を仰いだのが、88年から2011年まで続いた軍政期に商業相、財務相、国家計画・経済開発相などを務めたエーベル氏であった。1968年当時、彼は国軍の第41大隊の司令官としてラーショーにいた。同じキリスト教徒のよしみで、伝手(つて)をたどってエーベル氏を頼ったのだという。彼はリスの「難民」たちにラーショーにほど近い森林地帯を斡旋(あっせん)した。リスの人々は豊富な森林資源を伐採して国内や中国で売ると同時に、森や荒れ地の開発を進めた。耕地を作り出し、家を建て、道を引いて、自分たちの村をここに築いていった。

 シャン州の内戦は80年代になっても継続し、カシ村の人々はこの地に定住することになる。難民がディアスポラ(移住者)になったのである。

 90年代になると内戦が沈静化し、中国との国境貿易が盛んになって、カシ村の経済は急速に発展した。その来歴から、彼らは中国語に堪能であり、中国に森林資源を売るだけでなく、交易に参入する者や中国に出稼ぎに行く者が増加していった。90年代には、森林を耕地化して作付けしたトウモロコシが中国に輸出されるようになり、さらにこれがF1ハイブリッド種(第一交配種)に変わると、収穫量と輸出量が急拡大して、その利益は村に広く行きわたった。

 2008年にはリス語でキリスト経典を教える寄宿学校が村内に作られ、ミャンマー国中からリス民族の若者が集まってくる。難民の村が、ミャンマー中のリス民族の語学および宗教教育の中心となったのである。

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