
トランプ米大統領(AP)【拡大】
ここでのイノベーション都市とは先の米大統領選でヒラリー氏に投票した州にあり、「旧来型製造業都市」とはおおむねトランプ氏に投票した州にある。この本に引用された各種階層別の地図は、先の選挙結果を示す地図と見事に重なっている。アメリカでは4年も前から、(多分もっと前から)国民の分断が認識されていたのである。
イノベーション都市に本拠を置くメディアの報道では、トランプ大統領の過激な発言がアメリカ国民の分断を招いているように報道されているケースが目立つ。しかし実は因果関係は逆で、分断があったからトランプ大統領が誕生したのである。これは反実仮想で、もし僅差でヒラリー氏が当選して、「旧来型製造業都市」の住人たちの「不公平感」の訴えが封殺されたと考えればどうだろうか。民主主義は機能したといえるのだろうか。分断され、不公平感を抱く「もう片方」の国民の声がようやく反映されたと見るのが妥当だろう。
一方で、選挙時のトランプ氏の差別的で過激な発言や、他国に対する感情的で保護主義的な主張が、現状に不満を持つ「もう片方」の米国民たちに一時的なカタルシス(浄化)を与えたにせよ、イノベーション都市の不動産業で財を成したトランプ氏が、こうした分断の本質を理解し、解消する手腕を持つ大統領なのかどうかは全く別の問題である。