東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の国会議員や議員経験者で構成する「ASEAN人権に関する国会議員の会(APHR)」は20日、「民主主義の死を告げる鐘/カンボジアにおける議員への攻撃と脅威」と題する報告書を発表した。与野党の対立が続くカンボジアの政治情勢について、50ページ余りにまとめた。「カンボジア政府の野党への抑圧は、民主主義を脅かす行為。ASEAN地域全体に影響を及ぼしかねない」と強く批判している。
◆独裁に強い懸念
今年6月に地方選挙、2018年7月には5年に1度の国民議会選挙を控えるカンボジアは、政治的緊張が高まっている。フン・セン首相の長期政権による「政治の安定」が、年7%前後もの高い経済成長率の前提となっている同国では、政治の行方が経済活動にも大きな影響を及ぼす。
APHRの報告書は、フン・セン首相率いるカンボジア政府と与党・人民党が、さまざまな手段で野党・救国党の活動を妨げていると批判した。特に、カンボジア政府が政党法について「政党の党首が有罪判決を受けた場合、その党を解散または活動停止させることができる」と2月に改正したことを重視。「このままでは、議員たちが国民のために、国の将来のために働くことができない」と非難している。
政党法の改正は、訴追された野党リーダーのサム・レンシー前救国党党首を事実上の標的にしたといわれる。サム・レンシー氏は、身柄拘束を避けるために現在、国外にいるが、政党法改正を見越して党首を辞任、救国党の活動停止を回避した。