タイ新国王、軍政と「すきま風」 新憲法案に異例の修正要請 (2/3ページ)

ワチラロンコン国王(右)とプラユット暫定首相(左)が出席して行われたタイ新憲法公布式典=6日、バンコクのアナンタサマーコム宮殿(AP)
ワチラロンコン国王(右)とプラユット暫定首相(左)が出席して行われたタイ新憲法公布式典=6日、バンコクのアナンタサマーコム宮殿(AP)【拡大】

 タクシン派政権を相次いで退陣に追い込んだ憲法裁判所と国家汚職防止取締委員会などの独立機関には、引き続き三権を凌駕(りょうが)する強い権限が与えられ、内閣や下院、政党を監視する。近代国家に不可欠な権力分立の原則は07年憲法と同様に極めて不安定なものとなった。憲法裁判事や独立機関委員の任命は上院に行わせ、間接的ながら軍の支配を確保した。

 政党法や選挙法などの憲法付属法の整備が必要なことから、総選挙の実施には最短でも1年以上はかかる見通しだ。今年末には、昨年10月に崩御したプミポン前国王の葬儀とワチラロンコン新国王の戴冠(たいかん)式を控え、軍政は最長で来年11月までの行程表を描く。

 プラユット軍事政権は、いまなお60%を超える高い支持率を維持するが、1970年代や90年代にあった反軍運動の過去をひと時も忘れてはいない。民政復帰後の権力基盤確保に躍起なのもそのためだ。具体策の一つを、政府機関への軍人の積極的な配置に見ることができる。内閣は35人の定員の4割近い13人を軍人と系列の警察官僚が占め、省庁への影響力を強めている。最大で19人(議長を含む)の王室を支える枢密院も、史上初めて軍出身者が過半を超え、永続的な政治への関与を確実とした。

 もう一つが、今回施行された新憲法だ。軍政は当初、首相と上下両院の議長、陸海空軍と警察トップで構成する「改革と和解委員会」を内閣、国会、裁判所の三権の上部に置く構想を描いた。2015年8月に策定した第一次憲法草案に盛り込み、成立を目指す考えだった。だが、立憲政治をないがしろにしかねないと国内外で強い批判が起こった結果、断念。草案の承認権を持つ国家改革評議会に働きかけ、一次案を自ら否決に導いたという経緯がある。代わって採られた措置が、憲法裁と独立機関に強い権限を持たせて間接的に支配する方法だ。

新たな規定に待った