【飛び立つミャンマー】高橋昭雄東大教授の農村見聞録(44) (3/3ページ)

2017.5.26 05:00

焼畑のために草木を伐採する農民。人手が足りないときは労働者を雇うかフローブンという交換労働を行うが、火入れの1日を除き、村を挙げてのいわゆる共同作業は一切ない=2004年12月、ミャンマー・チン州ハカ郡ゾークワ村(筆者撮影)
焼畑のために草木を伐採する農民。人手が足りないときは労働者を雇うかフローブンという交換労働を行うが、火入れの1日を除き、村を挙げてのいわゆる共同作業は一切ない=2004年12月、ミャンマー・チン州ハカ郡ゾークワ村(筆者撮影)【拡大】

 チン人の相続制度については、男子だけに相続権があるとか、長子相続であるとか言われてきたが、土地人口比率によって変化してきたものと思われる。

 同時に土地所有制度も変化してきた。元来は最初に焼畑を開いた者がそれを私的に占有した。だんだんと自由に開ける土地がなくなってくると、相続と連動して所有の私的概念も強くなってくる。さらに人口圧が高まると、休閑期間が短くなって、土地の肥沃(ひよく)度も落ちてくる。終には世帯内の相続で対処できなくなり、いわば窮余の一策として村による焼畑の管理すなわち共有制が登場してくる。それは有力者優先の土地配分だったり、くじ引きだったり、貧困者優先だったり、村によっていろいろな形態をとる。つまり「常識」とは逆に、私有制が先にあってその後に共有制が登場している。

 土地所有史論は、共同体の管理する土地が時代を下るごとに狭まって、近代になると私有化されて完全になくなるという筋立てになっているが、チン丘陵では村による共有制は私有制度が行き詰まった後に登場してくるのである。また、こうした制度変化の導引が生産力にあるのではなく、土地に対する人口圧や農業の商業化にあるのも興味深い。

 農村調査をしていると、われわれが学んできた理論と違う現実にふと出会うことがあり、それがまた思索の刺激となる。原始共産制を理想とし、資本主義の後に、社会主義→共産主義を想定する思想にも疑念がわいてくる。(随時掲載)

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