ADBの試算では、2030年までの間にアジアで電力や交通、通信、水・衛生で総額26兆1660億ドルものインフラ建設のための資金需要があるという。既存の金融機関だけではまかないきれず、AIIBの成長にも期待するADBの考えが透けてみえる。そうはいっても途上国でのインフラ建設は、収益性の高い民間プロジェクトとは一線を画すものだ。発電所を建設しても、幅広い経済波及効果がなければ、その案件だけの収益では、投融資資金の回収は困難だからだ。
“建設会社”へ群がり
金氏はAIIBが、「ウィンウィンの国際金融機関になる」と話すが、途上国への経済支援が必ずしも収益を狙った行為ではないのは明らか。その原則をはき違えて、80カ国・地域が利益を求めてAIIBに群がっているとすれば、それは途上国支援のための国際金融機関ではなく、単に中国が旗を振る“建設会社”の株主になるがごとく。中国の意向に従ってプロジェクトに資金を出しても、本当に収益を上げられるか。
もちろん中国は、国内総生産(GDP)で日本の3分の1ほどだった2000年ごろから、現在では日本の2倍を超える規模になるなど、既存の常識で測れない成長速度をもつ。「質より量」で、AIIBも強引に押し出す戦略とみられるが、国際社会から信頼を得るまで、まだしばらく時間がかかりそうだ。(上海 河崎真澄)