イノシシを撃ったボーガンを構えるジアダムの農民兼猟師。やじりには山で採集したトリカブトが塗ってある=2002年12月、カチン州・プタオ郡(筆者撮影)【拡大】
■雪山の麓の村々を訪ねて
ミャンマー最北部にはヒマラヤ山脈の東端が張り出しており、東南アジアの最高峰カカボラジ(標高5881メートル)をはじめとする、万年雪を頂いた高嶺が連なっている。冬季にミャンマー最北の飛行場プタオに降り立つと、それらほど高くはなくとも、雪を被った山々を見渡すことができる。2002年12月、私はそうした雪山のひとつ、ポンカンラジ(標高3606メートル)に登った。
今回は、この山行の道筋で宿泊させてもらった、ミャンマー・カチン州北部の深山の中に点在する村々の生活を紹介する。
◆地域で異なる単位
一泊めの村は、プタオ空港から歩いて6時間ほどの上サンガウン村。標高はまだ500メートルほどしかない。リス族とロワン族が住み、村の世帯数は180、ビルマ族と同じく、ほとんどは核家族世帯である。焼き畑と水稲作を主な生業としている。焼き畑の作物は陸稲とトウモロコシで、水田からは1エーカー(約0.4ヘクタール)当たり60ポウンの籾(もみ)が取れるという。およそ588キログラムだから、単収はかなり低い。1ポウンは320ミリリットルのミルク缶60杯分を表す容量であるが、この単位はビルマ族が多く住む中央平原やデルタ地帯ではほとんど使われておらず、使われていてもミルク缶64杯分である。だが南南東にあるシャン州では、1ポウン=ミルク缶60杯分と、プタオ地方と同じになる。ところが、ミルク缶8杯分が1ピーというのは、プタオ地方と中央平原・デルタ地域では同じであるが、シャン州では10杯分が1ピーとなる。最重要作物のコメを量る単位でさえ統一されていないのがミャンマーの現状である。