7月からすべてのレジにセルフ精算機を導入した都内のスーパーマーケット。レジの人員が約3割減らせるという【拡大】
産経新聞社が7月下旬から8月上旬にかけて主要企業121社を対象に実施したアンケートで、無回答を除くと36%の企業が人手不足を感じていることが分かった。労働市場の需給の逼迫(ひっぱく)は賃金上昇圧力となり景気拡大に寄与することが期待される一方で、商機を逃す要因にもなりかねず、警戒感を強める企業の姿が浮かびあがった。
割合は、いずれも無回答を除いて算出。「全般的に不足」と回答した企業が4%、「一部で不足」が32%だった。「過不足はない」との回答が最も多く63%だが、「過剰」という回答は1%だけで、全体としては人手不足の傾向がうかがえる結果となった。
人手不足の最大の要因は景気拡大を受けて企業活動が活発化していることだ。厚生労働省の担当者は「共働きの増加や定年後の再雇用などで労働力人口は増加傾向にあるが、それを上回るペースで仕事が増えている」と話す。6月の有効求人倍率は1.51倍と、高度経済成長直後の1974年2月以来の高水準となっており、アンケートでも幅広い業種で人手不足が広がっていることが分かった。
各企業に人手不足が景気に与える影響を聞くと、64%の企業が「悪影響を与える」と回答した。「受注活動や生産活動の遅延」(建設)や「人件費上昇が収益を圧迫する」(素材)などが主な理由だ。一方で、「賃金上昇圧力の強まりは企業の生産性向上を促す」(保険)といった意見や、「賃金の引き上げによって消費が拡大する」(食品)などと前向きにとらえて「一部に好影響」とする回答も12%あった。「その他」として、悪影響と好影響の両方を指摘する企業も17%あった。