
「1万円札廃止論」に現実味はあるのか【拡大】
日本では昨年、世の中に出回るお札の額が初めて100兆円を突破した。預金金利の低下で銀行にお金を預けておくメリットが薄れたことで、自宅で現金を保管する「たんす預金」が増えたもようだ。18年から預金口座に任意で紐付けする「マイナンバー制度」が始まることも、「税務当局に保有資産を捕捉されたくない」と考える個人による現金需要を押し上げたと見られている。
海外では、マネロンなどの経済犯罪対策を目的に、高額紙幣を廃止する動きが相次いでいる。インドのモディ首相は昨年11月、1000ルピー札と500ルピー札の廃止を唐突に宣言。一時的に現金が大量に不足する事態に陥った一方で、電子決済の普及が拡大した効果もあった。
欧州中央銀行(ECB)も18年末で500ユーロ札を廃止することを決めている。このほか、シンガポールやカナダ、スウェーデンなどでも高額紙幣を廃止した経緯がある。
ただ、日本の場合、1万円札の多さだけで、地下経済が膨れているというのはいささか乱暴な議論に思える。ロゴフ氏は現金での保管に便利な高額紙幣をなくしてしまえば、マイナス金利の深掘りがしやすくなり、金融緩和の効果も出やすいとも訴えている。
こうした見方に、日本の多くのエコノミストは懐疑的だ。明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは「現金保有の機会費用が増すことは、マイナス金利の深掘りを容易にするが、金融政策のために現金の使い勝手を悪くするというのでは、多くの国民は納得しない」と主張する。