
「1万円札廃止論」に現実味はあるのか【拡大】
みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「必死に稼いで蓄積した国民の資産に、合理的かつ説得的な理由がないまま政府が強引に圧力を加えると、社会が大きく混乱する上に、財産権侵害だとして訴訟が頻発するだろう」と指摘する。
7月下旬まで日銀の審議委員を務めていた、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストが8月2日付で配信したリポートも注目の的だ。
日本で現金需要が高い背景について、木内氏は、(1)現金決済を好む国民性(2)低金利で銀行預金を保有するインセンティブが低下(3)現金を持ち運ぶことの不安が比較的小さい(4)どの地域でも現金が不足する事態が生じにくい(5)紙幣のクリーン度が高い-などと整理している。
その上で、木内氏は日本で現金需要が高いのは、日銀が全国に現金が行き渡るように頻繁に輸送したり、新札の入れ替えを適宜行っているためだと強調する。木内氏は「現金利用の利便性を高める日銀の取り組みが、日本のキャッシュレス化を遅らせているとの指摘は的外れだ。ましてや現金が犯罪行為に利用されていることを間接的に助けているとの一部の意見は誤りだ」と述べ、1万円札廃止論に異議を唱えている。(産経新聞社 経済本部 米沢文)
■ケネス・ロゴス氏 専攻はマクロ経済学、金融経済学。米イェール大を首席で卒業。マサチューセッツ工科大で博士号取得。プリンストン大を経て、1999年ハーバード大経済学部教授。2001~03年国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミスト。カーメン・ラインハートとの共著にベストセラー「国家は破綻する 金融危機の800年」。チェスの天才として知られ、1978年チェスの最高位グランドマスター取得。64歳。米ニューヨーク州出身。