日米経済対話で米国が自由貿易協定(FTA)交渉に強い関心を示したことで、今回は要求をかわせると楽観していた日本側は冷や水を浴びせられた。FTA交渉を始めれば米国が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に復帰する芽を潰しかねず、日本は慎重な構えを崩していない。ただ、11月5日から来日するトランプ大統領が交渉入りを求める恐れがあり、対応を検討する必要がある。
「少なくとも今、FTA交渉を始める考えはない」
経済官庁幹部はこう強調する。懸念するのは11月10日からのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて大筋合意を目指すTPP交渉への影響だ。
参加11カ国は離脱した米国の復帰につなげるため、高水準の貿易自由化を維持する方向で協議している。ただ、経済規模が大きい日米が別途FTA交渉を進めれば米国が戻ってくる期待は急速にしぼむ。11カ国の協議は前提が崩れ、妥結が難しくなる可能性がある。
日本政府内ではこれまで、米国は「日本とのFTAを進める余裕がない」とみる声が強かった。最大の貿易赤字相手国である中国との交渉に加え、北米自由貿易協定(NAFTA)や米韓FTAの再交渉に注力しているためだ。