【上海摩天楼】なぜ日東電工はしくじった? 対中ビジネス、日本企業の“正しい撤退作法”とは (2/3ページ)

日本をはじめ海外から巨額の投資を呼びこみ、めざましい経済発展をとげた中国上海市の国際金融センター(河崎真澄撮影)
日本をはじめ海外から巨額の投資を呼びこみ、めざましい経済発展をとげた中国上海市の国際金融センター(河崎真澄撮影)【拡大】

 残念ながら1月に起きた日東電工のケースがそうだ。同社の1月31日の発表によると、同社グループで100%を出資していた江蘇省蘇州の連結子会社の工場で、製品の価格競争力の見直しなどから、全出資持ち分を日本メクトロンに譲渡した。

 中国において合法的に行われた株式の譲渡であり、一部、解雇された従業員の保障も合法だったが、同月初めから抗議デモが発生。業界ニュースサイト「電纜(でんらん)網」は「日東電工は蘇州工場を閉鎖し、従業員は史上で最も寒い冬を迎える」との感情的な見出しで、「中国市場から正式に撤退し、従業員1000人以上が春節(旧正月)を前に失業する」とまで書いた。

 実際同社は、蘇州以外でも中国各地で事業を続けているが、日本企業を“やり玉”に挙げたい中国メディアはお構いなしだ。

 日東電工では「既に従業員側と保障問題でも合意し、問題は完全に収束した」(ブランド戦略部)と説明する。しかし地元報道で1000人以上の従業員が感情的なデモを繰り広げた後の労使交渉は容易ではなかっただろう。このケースで、上海エリス・コンサルティング代表の立花聡氏は「中国ネット情報が正しければ、内部情報が事前に工場の従業員にも漏洩(ろうえい)した可能性がある」と指摘した。

 中国において工場閉鎖や企業買収、解雇などは極秘の事前準備の上に「即日」通知するのが基本だ。雇用契約終了にあたっての保障基準も法的に明確になっている。だが、事前に未確定情報が漏れ、従業員が不安を膨らませてしまえば、撤退も転進も順調にはいかないだろう。合法なら全て丸く収まる、とはいかないのが企業経営の常だ。

中国で幹部社員を解雇する手法“脱密”とは…