【高論卓説】総理悲願の改憲に現実味 政治は「凪」の18年 まずは簡単な改正から (2/2ページ)

 ただ、「べき論」と現実は違う。いくら正義を振りかざしても、通らない案を掲げて国民投票で否決されたら元も子もない。仮に自衛隊明記案が国民投票で否決されたら、北朝鮮の暴発に身構える国際社会に対して妙なメッセージを送ることになる。まず、例えば、国民主権の明確化など(前文の「国民の代表者」の「主権の行使」に限らない、国民の直接の行使など)、誰もが反対しようがない改正を実現し、「憲法改正」の事実を作るべきだ。

 安倍政権も5年を超え、国民的な「飽き」もある中、私は困難な内容の憲法改正を乗り切る支持は得られにくいと悲観している。抜本的改正に道筋を付けるため、難しい改正は次の勢いある政権に委ね、まずは、改正の事実を作るという2段階改正論を唱えたい。

 妙なことを書くが、国論を二分する改正内容だと、確かに議論は盛り上がるが、国民投票で否決されるリスクも高い。当たり前の改正内容を目立たないようにサッと通して改正の事実を作り、国民に安心感を与えるのが先決ではなかろうか。この観点からは、国民投票は来年にして、参院選・衆院選・国民投票とトリプル投票に持ち込むことも一案だと思っている。各種の私擬憲法案が国民から多数出てきた1880年代は一つの理想だが、時代状況も体制も大きく違う。

 9条その他についてもいろいろと書きたいことがあるが(自衛「隊」ではなく自衛「権」とそのための実力部隊の可能性の明記にとどめるべきなど)、紙幅が尽きた。タブーなく憲法について議論できる日がそこまで来ていることを歓迎しつつ、ゴールが近づいているが故の慎重論を訴えたい。

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【プロフィル】朝比奈一郎

 あさひな・いちろう 青山社中筆頭代表・CEO。東大法卒。ハーバード大学行政大学院修了。1997年通商産業省(現経済産業省)。プロジェクトK(新しい霞ヶ関を創る若手の会)代表として霞が関改革を提言。経産省退職後、2010年に青山社中を設立し、若手リーダーの育成や国・地域の政策作りに従事。ビジネス・ブレークスルー大学大学院客員教授。44歳。