生物多様性のためのスローフード財団会長、ピエロ・サルドは、プレシディアについて以下のように語る。
「EUの定めた規則の主要対象国は歴史的文化の恵を受け、かつ温暖な気候のフランス、イタリア、スペイン、ギリシャの4カ国だ。これらの国々には政府レベルで地理的表示の制度があり、それと並行してEUの規則がある。問題は、これらのシステムが中堅以上の企業のビジネス促進に繋がっているために、その地域にある小さな生産者が不利を被っていることだ」
農産品が文化・経済的な資産として活用可能な地域において、地理的表示が名称や技術を知的財産として保護するわけだが、保護されるにも経済的な負担が大きいとの理由でその土俵にのれないこともある。
他方、大企業が商品の差別化目的で地理的表示を活用するが、大企業には、市場に安定供給するための生産プロセスの効率化や安全衛生という側面を強調せざるをえない、文化性と対峙しかねない事情がひかえる。
しかしながら消費者は工業製品ではなく味わいあるものを口にしたいと願う。特に地理的表示が強みをもつ地域にこそ、そのような消費者が多い。
食文化を巡る深刻な状況が更に深くなっている。(安西洋之)
【プロフィル】安西洋之(あんざい ひろゆき)
上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。現在、ローカリゼーションマップのビジネス化を図っている。著書に『デザインの次に来るもの』『世界の伸びる中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』 共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのサイト(β版)とフェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih
ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解するためのアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だが、異文化の対象は海外市場に限らず国内市場も含まれる。