アニメ制作現場「脱ブラック」へ 経産省、描画ソフトに共通規格で作業負担軽減 (1/3ページ)

デジタル化が進むアニメ制作の作業風景=東京都内(スタジオ雲雀提供)
デジタル化が進むアニメ制作の作業風景=東京都内(スタジオ雲雀提供)【拡大】

 経済産業省がアニメ業界の劣悪な労働環境を改善するため描画ソフトに共通規格を導入した。責任者の“感性”に左右されやすい非効率的なアニメ制作の現場はブラック化しており、アニメーターの作業負担の軽減が大きな課題となっているからだ。しかも映像化に欠かせない動画作成は多くの人手を必要とするため中国や韓国などの安価なアニメ業者に委託するケースが多い。共通規格による生産性向上で他国に頼らない環境も実現すれば、日本が誇るアニメ技術の流出も防ぐことができる。

 原画、動画手渡し

 2月20日、経産省の地下2階の講堂に約100人のアニメ業界の関係者が集まり、「アニメのデジタル制作導入ガイド報告会」が開かれた。大手制作会社のIT化の取り組み事例などが報告され、アニメーターの間で主流となっている5つの制作ソフトのデータ規格を統一することを確認。2月末に、最終報告書を経産省に提出し、共通規格の仕様を定めた。

 アニメは基本的に、「原画」と呼ぶ絵の間に「動画」と呼ばれる中間の絵を大量に差し挟むことで、動いているようにみせる。30分の映像化で一般的に8000枚近くの動画が必要となる。動画作成にはフリーランスや新人などのアニメーターが参加。多重下請け構造の中、作画の品質を管理する作画監督からの指示は原画担当者や動画担当者などに順々に下ろされていく。その指示は、経産省担当者が「『髪の隙間から見える耳が重要だ』という人もいる」と打ち明けるように、作画監督ごとの細かいこだわりがある。

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