そのうちに気づいてくるのは車両進行方向の右側と左側での風景の違いである。特に川に沿って鉄道が伸びているわけでもないが、右側の方が荒涼としており、左側の方が住宅、畑、工業のいずれも発達している印象がある。
「そうか、ぼくは寂しい方ばかり眺めていたのか」と視野が狭かったことを反省し、なるべく両方の車窓から交互に外を眺めようと努めてみた。なぜ、このような差があるのか、と考えながら。
が、そう思って厳密に見ようとすると、逆に右側にも発達した農業や住宅風景があるのではないか、と思えてくる。ぼんやりと眺めていた時の印象が現実に近いのか、ちゃんと意識して見ようとして見た風景が実態なのか、自分自身で分からなくなってきた。なんとも心もとないものだ。
カウナスの駅に着いた。駅舎の目立つ柱に「杉原千畝は1940年9月4日にカウナス駅を出発する直前まで『命のビザ』を発給し続けた」とリトアニア語、日本語、英語の順で書かれたプレートが貼ってある。
このプレートに一礼をしてカナウス市内に入った。(安西洋之)
【プロフィル】安西洋之(あんざい ひろゆき)
上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。現在、ローカリゼーションマップのビジネス化を図っている。著書に『デザインの次に来るもの』『世界の伸びる中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』 共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのサイト(β版)とフェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih
ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解するためのアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だが、異文化の対象は海外市場に限らず国内市場も含まれる。