投資マネー集中、中国経済を左右する「ハイテク基地」 北京のシリコンバレー「中関村」ルポ (3/3ページ)

ベンチャー起業家らが集まるコーヒー店などが立ち並ぶ中関村創業ストリート=3月16日(三塚聖平撮影)
ベンチャー起業家らが集まるコーヒー店などが立ち並ぶ中関村創業ストリート=3月16日(三塚聖平撮影)【拡大】

  • 中関村のコーヒー店。著名経営者らの写真が飾られた店内に、ベンチャー起業家らが集まり事業アイデアを練ったりしている=3月16日(三塚聖平撮影)
  • 中関村のレンタルオフィスの共有スペース。ベンチャー起業家らが会議や商談を熱心にしていた=3月16日(三塚聖平撮影)

 中関村の強みといえるのが人材の豊富さだ。中関村の周囲には北京大など中国を代表する名門大学が立ち並ぶ。三沢さんも「起業を志す名門大学の卒業生が多く、OBのネットワークも充実している。資金や人材などの面で北京は起業に向いている」と語る。中国当局も国内外から優秀な人材を引きつけようと躍起だ。中関村で働く外国籍のハイレベル人材に対するビザの優遇措置を打ち出してきているが、2月末にもハイレベル人材に関する「永久居留証」の申請範囲を拡大する追加措置を北京市当局が発表している。

 3月の全国人民代表大会(全人代=国会)でも李克強首相が政府活動報告で「外国人材が中国に来て働きやすくなるよう、ビザなどの制度や手続きを改善する。多くの人材の英知と力を結集すれば、必ず中国革新をスピードアップさせることができる」との考えを強調している。

 ハイテク産業への期待が高まっているのは、一時の高成長に陰りが見える中国経済を左右する“鍵”になっているからだ。また、過剰生産問題が世界から批判される鉄鋼・石炭産業などではリストラが進んでいるが、IT化で拡大するサービス産業が雇用の受け皿になっている側面もある。だが、鉄鋼などの「オールドエコノミー」と比べ、「ニューエコノミー」のハイテク産業はまだ経済規模が限定的で、中国経済の救世主になるかはまだ不透明な段階にあるのが現実だ。

中関村 北京市北西部に位置し、もともとは日本の秋葉原のような「電子街」だった。1988年に国務院(政府)が「北京市新技術産業開発試験区」とし、ハイテク産業への優遇措置を開始。99年には「中関村サイエンスパーク」との名称で規模を拡大。現在、同サイエンスパークは488平方キロにまで範囲を広げている。中関村の周囲には中国インターネット検索大手「百度(バイドゥ)」や「北京小米科技(シャオミ)」など国内外の有名企業が拠点を置く。